生姜焼き
独身の頃に勤めていた会社の近くには、いくつかの喫茶店があった。
短い昼休みのランチは、他の会社の社員達との席取り合戦でもあった。
私は真実ちゃんと言う若いママが作る,生姜焼き定食が好きだった。
元々は真実ちゃんの母親が始めた喫茶店だったが、体調不良で真実ちゃんが引き継いだそうだ。
その生姜焼きのタレは彼女のお母さんの秘伝なので門外不出らしかった。
何年か通っているうちに喫茶店を閉めるという話を聞いた。
真実ちゃんが結婚をするということ。
ご主人に伴って東京に転居することになったという話を聞いた。
ご主人になる人はお客さんで、札幌には転勤で来ていて,本社勤務になったとの話を聞いた。
私は喫茶店がなくなるのは淋しいが、真実ちゃんが幸せそうなので嬉しかった。
昼休みが終わる頃、真実ちゃんは時間があったら帰りに寄ってと言ってきた。
約束通り、帰りに真実ちゃんの喫茶店に寄った。
店は閉まっていたが、快く私を迎えてくれた。
そして真実ちゃんは生姜焼きの作り方を教えてくれた。
門外不出ではと問うと、もうお店はやらないからあなたにだけ特別に教えるわと、笑顔で答えてくれた。
タレの作り方から肉の漬け込み時間、付け合わせのキャベツの作り方など、私はメモを取りながら真実ちゃんの手際の良さに関心した。
いつも私が美味しいと幸せそうな顔をして食べている姿を可愛いと思ってくれていたようだ。
私はお礼を言って真実ちゃんと別れた。
それから,すぐに店は閉店して違う経営者の喫茶店になった。
それ以後、真実ちゃんには会っていない。
我が家の手作りの生姜焼きは真実ちゃんの味だ。
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